vol.18小嶌不二夫さん(30)【向き合う人②地球上からポイ捨てゴミをなくす:株式会社ピリカ代表 】


拾ったゴミをカメラでパシャり、投稿する。

SNSが普及した現代、食べた物や行った場所を写真に撮り多くの人に拡散する行為も当たり前になった。

このことに着目して開発されたのが、ゴミ拾いボランティアアプリ「PIRIKA」

使い方は簡単で、

ゴミを拾った証拠にPIRIKAに写真を投稿し、アプリを通して周囲のゴミ拾い友達と繋がって行く。積極的な輪が大きくなっていくことで、最終的に地球上からポイ捨てゴミがなくなることを目指す。

株式会社ピリカ代表 小嶌不二夫さんが、2011年京都大学大学院・エネルギー科学研究科在籍時に、起業し開発した。

今までに世界79か国、個人・団体の利用も含め約50万人の人が利用し、7500万個のゴミが拾われている。


◼ヒーローになりたい。7歳の少年が図書館で見つけた大きな“怪獣”


「ヒーローになりたかったんです」。


小嶌さんが環境問題に興味を持ったのは7歳の頃。

テレビやゲームで戦うヒーローに憧れ、“大きな問題”に立ち向かう人になりたかった。


そんな小嶌さんがたまたま図書館で出会ったのが、環境問題に関する数冊の本。

どれも解決するのが困難な「放射性廃棄物」、「エネルギー問題」や「砂漠化」「森林伐採」に関するもので、まさにそれらは7歳の少年にとって、倒すべき“怪獣”のように見えた。


中学・高校時代は野球やテニスに打ち込んでいたものの、

頭の片隅にはやはり、「環境問題」の四文字が離れずにいた。


◼◼研究者を目指していたけれど…


環境問題に興味を持っていた小嶌さんは大学に進学し、研究者を目指すようになる。

しかし研究者の役割は、基本的に一つのテーマを解明するために自分の人生をかけ、研究論文にまとめること。


「僕がやりたかったのは、環境問題を研究することではなく、解決することだったんです」


自分のやりたいことは研究者になることでは叶えられない。そう気付いた時には、もうとっくに就職活動の時期が過ぎていた。


悩んだ末に、2年間の猶予期間で自分の進むべき方向を定めようと、京都大学大学院・エネルギー科学研究科に進学。在学中には様々な経験を積んだ。


小嶌さんの手元にあった選択肢は二つ、環境問題を解決するために会社に入るか、自分の手で事業を起こすか。


その答えを探るためにベトナムでのインターン、そして三ヶ月間の世界一周旅行を経験した。

ベトナムにてインターン中の小嶌さん


自然がまだ多く残る新興国を中心に回り、インドや中国、そしてベトナムの大気汚染問題、ジャングルの中にポイ捨てされたペットボトルやお菓子の包み紙など、劣悪な環境問題を目の当たりにしたこと、そしてインターンを経て自分で事業を立ち上げる方が得策だという思いが強くなったこと。

この二つの思いが重なり、事業を立ち上げることを決意する。

モザンビークにて

中国にて


◼◼◼ゴミ拾いアプリ「PIRIKA」の誕生


「環境問題と一言で言っても、例えば大気汚染や水質汚濁の問題を解決するためには何十億もの莫大な資金が必要。そこで、目をつけたのがポイ捨てゴミ問題でした。」


世界一周で訪れた地球の裏側にある町にも、自分の身の回りにもポイ捨てゴミは溢れているのに、具体的な解決方法が示されていない。


そのことに気付いた小嶌さんは2011年、当時流行し始めていたSNSを使って、ポイ捨てゴミを身近なところからなくしていくべく事業を立ち上げた。

ゴミ拾いアプリ「PIRIKA」の誕生だ。

運営当初は研究所に篭り、毎日のように開発に追われていた。


「研究所は快適でした。優秀な研究仲間、快適な寝床、高性能のコンピュータ、すべて揃っていましたから(笑)」


「PIRIKA」の使い方は簡単で、道に落ちているゴミを拾いスマホのカメラで撮影する。


その写真をアプリを通して投稿することで、ゴミ拾いの輪を広めていくことが狙いだ。

今までに約50万人の人が利用し、毎年約10倍の勢いで拾われるゴミが増加しており、7500万個のゴミが実際に拾われている。


「自分の寝ている時にゴミが拾われていると、嬉しいですね」そう話す小嶌さん。

着実にポイ捨てゴミという“怪獣”を倒しつつある。


◼◼◼◼ポイ捨てゴミをITで「見える化」


「PIRIKA」の開発から4年が経った2015年

小嶌さんはじめ、会社のメンバー達は悩んでいた。


「PIRIKAが誕生して、拾われるゴミが増えたことは事実ですが、

 本当に街に落ちているゴミが減っているのか。そこが分からなかったんです。」


そこで、小嶌さんはPIRIKAの存在意義を証明するため、“地域の綺麗さ”を図る “ものさし”を作ることを決意。


「はじめは人の目で道に落ちているゴミを数えていました。でも一つ問題が。例えば、野球部出身のスタッフは道路脇の植え込みの中からゴミをくまなく探してくる。(笑)

と思えば一方で、道路上に落ちているゴミだけを数えてくる人もいる。得られる結果にかなり大きな差異が生まれてしまうんです。」


そこで、人工知能(AI)を用いた画像認識システムに着目し、開発したのが

ポイ捨てゴミ調査システム、“タカノメ”だ。



今現在は、ゴミを目視で確認し、手動で分類を行っているが、

ゴミの形状や色、大きさを撮影、分類を大量に行うことで機械学習させ、

最終的には道の映像をシステムに取り込むだけで、ゴミの量が数値化できるようになる。


当初の目的であるPIRIKAの存在意義を証明するだけでなく、新たな価値も生まれた。

目黒区や港区、福井市そしてパリからニューヨークまで、様々な自治体から反響があり、実際にその地域の調査を行ったのだ。

ポイ捨てゴミの多いエリアが赤く表示される ニューヨーク


とくにゴミが多いエリアに清掃員を増員するなど、ポイ捨てゴミ問題解決に自治体を巻き込みながら大きく前進することになった。


◼◼◼◼◼地球上からポイ捨てゴミをなくす


「最終的な目標は、PIRIKAの価値を最大化した上で、タカノメの調査を駆使し、ポイ捨てゴミの回収を効率化。地球上からポイ捨てゴミをなくすことです。」

小嶌さんは、熱く夢を語る。

これから、川や海に流れ出るゴミを食い止める試みも行っていくつもりだ。


◼◼◼◼◼◼20歳の人たちへ…


僕が20歳くらいの時、人間関係や将来のことなどで多くの悩みを抱えていた気がします。が、今思い返して見て気づいたのは、僕は10歳の時にも、20歳の時にも、そして30歳の今もだいたい同じように悩んでいるということです。

10歳の時にも悩みを乗り越えて、でも今は忘れてしまったように、今回もいつの間にか乗り越えて、10年後には悩んでいたことすらも忘れてしまうのかも。そう考えると、せっかくこんなに悩んでいるのにちょっと悔しい気もします(笑)

どうせなら、100歳くらいで死ぬ間際に、ああ、あんなこともあったなと思い出せるくらいに思いっきり悩んで、その上で壁を超えていくのがカッコいい人生なんじゃないでしょうか。僕はそうありたいと思います。

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Crossroads 〜20歳の時、なにしてた?〜

ハタチの時代を思い切り楽しむ人たちへの道しるべ。憧れのあの人は20歳の時、どんなcrossroads(分岐点)を迎えたのだろう。 「20歳の時、なにしてた?」そんな質問を中心に、年齢•職業•性別を問わずバラエティ豊かな方々にお会いし、人生インタビューをしています。