Vol.16高橋さん(70)【向き合うひと① 社会の“孤立”に向きあう】
栃木県足利市うまれ。結婚を経て同県の小山市に移住をする。地域に根ざした、様々な支援を行なっている。これからの夢は、子ども食堂を作ること。子どもとお年寄りが自然と集う 居場所づくりを目指す。
新宿から快速で一時間半。
栃木県南部の住宅街に来ていた。
ひんやりとした冬の風を受けながら約束の場所へと向かう。
「よく来たね」そう言って暖かいお茶で出迎えてくれたのは栃木県小山市に住む高橋さん。
45年前、25歳の時 結婚を機に小山市に越してきた。
子どもの故郷となる市のことを知りたいと「たんぽぽの会」を自ら立ち上げ、
寺や神社、地域の歴史や起源について幅広く学んだ。
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地域の活動にも積極的に参加し、50歳の時にたまたま、「ボーダー」の家族に出会う。
「ボーダー」は知的能力が境界域で、障害とみなされないため行政から知的障害者としての支援を受けることができない。
そんな現状をどうにかしようと、高橋さんは自立を支援するための施設開設に向けて動き出した。
「650人程の署名を集めたけれど、実現には至らなかったの」。まだ「ボーダー」に対しての理解が薄かった当時を振り返り肩を落とす。
しかし、そんなことで折れる彼女ではない。結局 個人的に、障害者手帳発行や施設入所の手続きを彼らに寄り添いサポート。一家崩壊の危機をなんとか免れた。
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それからというもの、身の回りに困った人がいれば、積極的に手を差し伸べるようになった。生活に困窮したお年寄りから、困窮した生活の中で楽してタダで物が手に入る快楽を覚えたゆえに過ちを犯してしまった少年。
中には、バッグ一つで高橋さんの自宅に逃げ込んできた人もいる。
「私が手を引いたら倒れてしまう人がいる。私は自分のできることを、できる範囲内で支援をしていきたい」
そう語る高橋さんの次なる目標は、子ども食堂を作ることだ。
それも、子供だけではなく一人で過ごすことの多いお年寄りも巻き込み、
お互いを「見守り合う」。そんな構図が自然と成り立つ環境作りが理想だと話す。
「企業にも、地域に何が還元できるか考えて欲しい」そう語る高橋さんは、
これから食堂開設に向け、地元企業にも自ら営業に出向き、資金を募っていきたいと話す。
「目標を持って、一生輝いていたいの。ただそれだけ。」
高橋さんの優しくそれでいて芯の通った笑顔は、いつまでも誰かの心の拠り所であり続けることだろう。
***編集後記***
「自分ができることを、できる範囲内でやりたい」
という高橋さんの言葉がとても印象的なインタビューになった。
世界的にも「分断」という言葉がはびこる現代。
隣に住む人の名前も顔知らない。そんなことも当たり前になった。
社会的な孤立は様々なリスクを生む。
国を挙げ、手厚い社会保障制度を整えていくことが最重要事項であることに変わりはない。
しかし、いくら仕組みを整えても支援が届かない人はいる。
そんな時に必要となるのが、やはり「人と人とのつながり」。
少子高齢化が進む今日、一人一人が真剣に考えなくてはいけない問題ではないだろうか。
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